ガンについて

がんの種類
がんの名称は、一般的には発生した臓器、組織などにより分類されます。「がん」は悪性腫瘍全体を示すときに用いられ、上皮細胞から発生するがんに限定するときは、「癌」という表現が多く用いられます。
がんは、発生組織や細胞から次の case01~ case03に分類されます。まれに1つの腫瘍の中に両者が混在する「癌肉腫」というものも発生します。発生頻度は、case02 上皮細胞から発生するがんが80%以上を占めます。
case01
造血器から発生するがん
血液をつくる臓器である骨髄やリンパ節を造血器といい、造血器から発生するがんには、白血病・悪性リンパ腫・骨髄腫等があります。
case02
上皮細胞から発生するがん(上皮性腫瘍)
上皮細胞は、体表面を覆う「表皮」、管腔(かんこう)臓器の粘膜を構成する「上皮」、外分泌腺を構成する「腺房細胞」や内分泌腺を構成する「腺細胞」などを総称した細胞です。
これら以外にも肝細胞や尿細管上皮など分泌や吸収機能を担う実質臓器の細胞も上皮に含められます。
また上皮組織とは、体表面、管腔「消化管、呼吸器、泌尿器、生殖器など」、体腔「心膜腔、胸膜腔、腹膜腔」などの表面を覆う1ないし10数層の細胞の層でできた組織をいいます。
上皮細胞から発生するがんの代表的なものには、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、頭頸部のがん(喉頭がん、咽頭がん、舌がん等)などがあります。
case03
非上皮性細胞から発生する肉腫
肉腫は、骨や筋肉などの非上皮性細胞から発生するがんです。代表的な肉腫には、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫があります。
治療の目的を明確にすることが大切

医療機関が何を目的にして治療を行うのかを知って、ご自分で判断する事が大切です。
目的は、
- がんの治癒なのか?(OS 全生存率が指標)
- 延命なのか?(OS 全生存率が指標)
- がんの縮小なのか?(PFS 無憎悪生存率が指標)
- 症状の緩和なのか?(QOL 生活の質に関係する)
治療を行うのかを決めるにあたって大切なことは、医師に勧められるからではなく、ご自分が何を目的に治療をするのかを良く見つめ、メリット・デメリットを確認して、その目的にどれくらい沿うことが出来る治療なのかを臨床データーを確認しながら判断すること、そして何を幸せに感じて何を大切にしていくのかという生活の質QOLを考慮しながら、自ら選択をつみ重ねていくことが必要になります。
OS 全生存率
その治療で、どれだけ生存期間を延ばせるかの指標で、治療を判断するうえで最も重要です。生存期間中央値(真ん中50%に位置する期間)を比較して治療法の優劣を判断します。
PFS 無憎悪生存率
その治療で、がんが増大や転移せずに安定した状態の患者さんの割合が、全体の何割であったかを示す指標です。
がんが増大したり進行しないというPFSが優れている治療でも、身体へ与える負担の影響が大きく、結果的にOSは変わらず延命しないということは多々あるので注意が必要です。
急速に縮小・消失する性質のがんは、再発するスピードも速い傾向があることも知っておくことが大切です。
また、癌が大きくなるスピードは、がんの性質や、体の抵抗力によって違ってきます。
体の抵抗力が強ければ、がんは簡単に転移したり大きくなったりすることが出来ませんが、治療などで細胞組織や細胞膜の強さが弱くなったり、抵抗力が落ちたりすると、がんは臓器に転移しやすく、また大きくなるスピードも速くなります。
腫瘍マーカーCEA
腫瘍マーカーCEAは、広範囲の悪性腫瘍で陽性を示し、早期癌に対する感度は低いとされる一方、癌の進行度と比例するので、治療効果の判定、治療後の経過観察や予後の予測において有用性を発揮します。
QOL 生活の質
「健康とは身体的な側面はもちろんのこと、精神的、社会的に良好な状態である」ということを踏まえて、最後まで自分の無限の可能性を確信し、身体的・心理的・社会的・生活環境・精神性(宗教、信念)の面で、自分は何を幸せに感じるのか、何に満足するのか、何を表現して行きたいのかを見つめ、その中の何を選択し実現して行くのかを主体にする考え方です。
また、身体的領域(痛みや不快感のための制約感・治療の必要度・活力の程度・外出の程度・睡眠の満足感・活動をやり遂げる能力への満足感・仕事をする能力への満足感)、心理的領域(生活の楽しさ・生活に対する有意義感・集中力・外見への評価・自己満足感・抑うつ感)、社会的領域(人間関係への満足感・友人サポートへの満足感・性生活への満足感)、環境領域(安全性・生活環境の快適さ・経済的状態・情報取得の充実度・余暇・近隣環境への満足感・医療施設や福祉サービスの利用のしやすさ・周辺の交通への満足感)などを細分化して自己評価を行ない、考えを整理してみるのも一つの方法です。
抗がん剤治療について
固形がん(固まりをつくるがん)に対しては、抗がん剤が延命に効果があるという臨床データーと、効果がないというデーターの両方が存在していて、情報を深く追求して判断するには専門家でもかなり困難で戸惑います。
その場合は「効果あり」という臨床データーには、薬をつくる側と販売する側がデーターをつくっている現状がある限り、利害関係が働くという点を十分に考慮して、その信憑性を判断することが必要です。
抗がん剤に対する感受性(腫瘤の縮小)は、人によってまちまちで、腫瘤が例外的に著しく縮小する人もいます。しかし、がん細胞は正常細胞から分かれた遺伝子的にほぼ同じものなので、抗がん剤に対する感受性は、がん細胞と正常細胞で共通している可能性が高く、その場合、正常細胞に対する抗がん剤の毒性が大きくなることも考える必要があります。
体は、細胞の配列や数が一定の状態を保っていなければその構造と機能は保てず、正常細胞の何割かが死滅すると、免疫や肝臓などの臓器に機能不全が起こります。特に、肺は非常に繊細な組織で、抗がん剤の毒性が出やすくなります。喫煙歴などがあるとタバコの成分で肺組織は痛めつけられているので、さらに毒性が発現しやすくなっていることも充分に考慮すべきです。
また、がん細胞は99%死滅しても1個でも残れば再び増殖することから、がん細胞は幹細胞であり、正常細胞よりも抗がん剤の毒性に強いと考えられています。
実際に、抗がん剤を使うと、がん細胞が急速に抵抗力をつけて悪化することが多く起きます。
抗がん剤の組み合わせや量は標準的なものが決められているので、どんな抗がん剤を組み合わせるかという判断よりも、いつやめるかという判断を、医師任せにせずにいつか自らしなくてはなりません。
標準的なサイクル数を確認し、副作用を感じて、これ以上の治療は限界と、最終的には自分の体と相談して決められるような情報を、事前に得ておくことも大切です。